東京医科歯科(東京科学)大 編入学試験 2024年度問題2の解答例

こちらの記事(問題1の解答例)の注意書きなどを先にご覧になってください。感想などは別記事で述べる予定です。

出典:Granfeldt A, Holmberg MJ, Andersen LW. Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation for Cardiac ArrestJAMA. 2023;329(19):1693–1694.

本文中の臨床試験:Yannopoulous et al (2020)Belohlavek et al (2022)Suverein et al (2023)

(1) ECPRにおいて血液がどのように体外回路に出入りするか、そして回路内でどの様な変化を受けるか日本語で説明せよ。

(解答欄:5行)

(体外回路に入る→回路内→出る の順で記述)
血液は下大静脈のような中心静脈から体外回路に入り、回路内では、血液から二酸化炭素が除去され、酸素が付加される。回路から出る際は、大腿動脈を通して動脈へと戻る。

(設問の指示の順番を守った場合:どのように出入りする→どのような変化を受ける の順で記述)
血液は下大静脈のような中心静脈から体外回路に入り、大腿動脈を通して動脈へと戻る(回路から出る)。回路内では、血液から二酸化炭素が除去され、酸素が付加される。

(2) ECPRを成功させるには熟練した施設で行う事が重要な理由について日本語で説明せよ。

(解答欄:5行)
ECPRは迅速に行われなければならず、分野をまたいだチーム、多くの資源、綿密に定められたプロトコルを必要とする。また、施設によって効果的な方法は異なるが、ECPRによる血管へのアクセスとカニューラの設置には、血管超音波検査と蛍光透視鏡を利用する必要があるため。

→vascular access, cannula placement の訳はもっといいのがあるかもしれません。

(3) ECPRの合併症と発症率について日本語で述べよ。

(解答欄:3行)
心停止に対して行われたECPRの生存率は約30%で、約25%の患者に出血、約5%の患者が大腿動脈カニューレの末梢に肢虚血がみられた。

(コメント)
limbic ischemia(肢虚血)、distal(抹消の)を訳せたかどうかで差がついたかもしれません。

(4) In your own words, describe the “benefit” of ECPR that were indicated in the Yannopoulous et al. (2020) study. (Answer in 20 words or less in English)

(解答欄:3行)
ECPR can improve patients’ survival compared with conventional CPR.

(コメント)
自信がないです。
本文中、付近には3つの臨床試験について言及されていますが、この(Yannopoulous et al)臨床試験のみECPRに旗が上がっており、他2つには介入とコントロールで有意差がみられなかったことに気づけたかどうかが、ポイントだったかもしれません。

(5) Suverein らの臨床試験内容と結果について、その他の臨床試験との違いについても含めて日本語で要約せよ。

(解答欄:8行)
Suvereinらは、初期の心室細動患者160人に対してECPRもしくは従来のCPRでランダム化を行ったが、治療効果にグループ間での有意差はみられなかった。他2つの試験との違いは、この試験は複数施設で行われたことと、他2つの試験と比べ、心停止からECPRを始めるまで時間がかかり、カニューレーションの失敗率が高かったことである。

(コメント)
難しい問題だと思います。難しい点:
Yannopoulos et al (2020) のみ、ECPRの有効性に旗が上がっている(ECPR 43% vs conventional CPR 7%)
Belohlavek et al (2022)のinterventionの書かれ方が少し複雑。
・設問の文章の解釈。

「その他の臨床試験との違いについても含めて」をどう捉えるか、が問題です。以下のような思考回路を辿る必要があったのかも。
・「SuvereinらはXX(実験デザインと結果)、BelohlavekらはXX、YannopoulousらはXX、違いはXX」のように記述するには解答欄が足りない。なのでこの方針での記述は諦める。
・段落の最後のほうに、multi centerであることやこの臨床試験のデザインについての言及がある
・なので、Suvereinらの実験について言及し、「2つとの違いは」というような形でまとめる

(6) ECPRを導入する適応条件に関する現状について日本語で説明せよ。

(解答欄:6行)
年齢、合併症の有無などを基準に多くのプロトコルは作成されているが、観察研究のデータを用いた評価ではバイアスの危険性がある。厳格な基準を用いると、利益を得られうる患者にECPRが行われなくなるという懸念もある。現在の臨床試験の対象外となっている患者に対する利益は不明であり、ECPRを行う適切なタイミングや、ECPRの利益を最も得られうる患者を明らかにするために、さらなる研究が必要である。

(別解)ECPRを行う施設に患者を送ることによる危険性が存在しうる。また、現在の臨床試験の対象外である、心臓を原因としない院外心停止や、院内心停止のような患者に対する利益は不明である。ECPRを行う適切なタイミングや、ECPRの利益を最も得られうる患者を明らかにために、さらなる研究が必要である。

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